Lucid Color 花の水彩画 - 岸透子の透明水彩画

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花の水彩画の最新ページです。

此岸より

2019年にギャラリーナカノで開催された「県美界隈展 「花」、Y氏と共に」展のために描いた薔薇。
吉村芳生さんには生前、勉強になるお話を何度も聞かせていただきました。本当はもっと教えていただきたかった。今ならもう少しお話の内容も理解できたのではと思うこともあります。

参加にあたっては「吉村芳生さんの七回忌に一人1点ずつ出品して花の作品展を」と聞いただけでしたが、私なりに「45名の花が会場を埋め尽くし、全体で一つの作品となる」というイメージを持って、その一部になれるように「此岸」の力がこもるように花を描いてみました。

花は命であり、此岸にある。それぞれが生き、死に、全体は続いていく。命の連続が彼岸の風景を作っていく。 表と裏が連続して入れ変わるメビウスの輪。 この世がすなわち彼岸であり、彼岸は此岸の命の中にある。

きっと展覧会は彼岸となって吉村さんの元に届いたのではないかと思います。

2019年

四ツ切 非売


それぞれの道へ

同じ株から伸びた2本の枝。
一本の葉は早く緑色になり、後から伸びた方はいつまでも紅い葉。
片方は多くの蕾をつけ、もう一方は天辺に一つだけ。
出発点は今でも同じだけど、どんどん違う方向へ伸びていく。
それぞれが美しい姿でした。

2019年

四ツ切 ¥24,000


木陰に遊ぶ

山の木下などに好んで生えているシャガの花です。ペタペタと絵の具を塗ったような花弁の模様がちょっとおどけた感じで好き。

2019年

太子 個人蔵


薔薇の言葉

花は、植物が虫や鳥などに「ここに蜜があるよ」と知らせるための謂わば広告、看板。
受粉を手伝ってもらうために、まずお礼の蜜を用意し、その事を伝えようとそれぞれに趣向を凝らして工夫しています。
花弁はその看板のキャッチコピー。植物が他の生物に語りかけるための声であり、言葉です。

葉や茎、根やトゲは植物自身が生きていくための器官ですが、花の他者に見つけてもらうために発達しました。
誰かに呼びかけるなら、相手がどんな生き物で、どんな特徴を持ち、どんな好みなのか知らなければいけません。
周りに目を向け、他者を知り、伝えようと一生懸命なのが現れているからこそ、花は魅力的に見えるのでしょう。

展覧会ではよく作品の隣に花弁だけの絵を切り取った物を貼り付けるんですが、これはそれごと立体額の中に入れてみました。

2019年

30角 ¥18,000


古木の新芽・病葉(わくらば)と彩り

私は花を描く時、その姿を人間や人生の流れになぞらえるように捉えています。擬人化の逆の、擬植物化というか。

特に自分が病気があるせいか、傷つき病んでも生き続ける姿に心惹かれます。
葉や花弁が虫に食われてもそのまま生き生きと花を咲かせる姿を見ると、傷ついていてもいいんだなと安心します。
病気の葉の変色は痛々しいけれど、時にその色が他にはない美しさに見えます。今までお会いした中にも、病んで体が衰え、その苦痛とともに生きる時にしか得られない、揺るぎない美しさをたたえている人がいました。

植物の声は私たちには認識できないだけで、本当は彼らも苦痛や不安を感じ、時には愚痴を言いながら生きているのかもしれません。
それでも彼らは受け入れ、ただそのままに生きている。
それが魅力的で、憧れるのかもしれません。

2018年

20号 個人蔵


気品

赤い薔薇は枯れても美しく気高く見えます。
入院している時、そんな人を見ました。
もう治らない病気で弱り切って、それでも穏やかに全てを愛して気高く過ごしておられました。
ごく普通の田舎のおばちゃんだったけど、誰よりも美しく尊敬できる人たちです。

薔薇は切って活けていたら枯れた後にきれいで勢いのある新芽が伸びてきました。
どんな状態でも、薔薇は新芽を伸ばします。
ちなみにこの枝は植木鉢に移して今年2年目の花を咲かせています。強い。

2017年

大衣 個人蔵


Petal

2017年

大衣 ¥36,000


青をめぐる対話

人間:花びら増やして
薔薇:いいよー
人間:トゲも無い方が扱いやすいな
薔薇:そうか、いいよ
人間:青い花…
薔薇:無理
人間:…
薔薇:…
人間:…青…
薔薇:…じゃあ紫くらいなら…


品種改良は、人と薔薇との対話です。

花弁を増やしたい、色を変えたい、花を大きくしたい……人は薔薇に求めるものを伝え、薔薇はそれを受け入れれば増やしてもらえると気付いて自分を変えることに合意し、その結果様々な品種が生まれてきました。

薔薇は強い植物で、度重なる品種改良にも耐え、多種多様な姿の花があります。
本来は自分を守るために発達させたはずのトゲでさえ、あえて無くした品種もあります。

それでもまだ完全に青い薔薇はできていません。
どうやら青い花だけは、まだ薔薇の意思に合わないようです。<br> 薔薇と人とはこれからも対話を続けていくんでしょうね。

2017年

太子 ¥18,000


Alive

青い薔薇を活けていたら花が枯れ、新芽が出始めました。
原種の薔薇と変わらないあざやかな赤い色に包まれていました。

この薔薇はいただいたもので、お庭で育てていた園芸用の品種だそうです。
淡い美しい薄紫色の花でしたが、芯には真紅を持ち続けていたようです。

根は出なくて挿し木はできないけど、芽はかなり大きく葉を開いていきました。

2017年

四ツ切 個人蔵


人知れず

春、山の木の一本が突然白くなって、あそこに山桜があったのかと気付きます。
誰も見ていなくても、桜は全力で美しく咲き、花弁を落として行きます。
木の下にはきっと桜色の絨毯が広がっていることでしょう。

2017年

四ツ切 ¥24,000


光(虞美人草)

2017年

四ツ切 ¥24,000


翠雨

2016年

四ツ切 個人蔵


終わりの次

庭に咲いた牡丹です。
大きな、まさに牡丹色の花がとても豪華でした。
花開いてからほんの数日の後、雨に打たれて花弁は散ってしまいましたが、その後に見えるようになった種も、また鮮やかな色と面白い形で、花に負けず劣らず存在感がありました。

むしろこれが次の主役ではないかというくらい。

雨上がりの、散ってもまた色の綺麗な花弁と、葉の上に球状に溜まった水滴とともに、描きたくなりました。

2016年

大衣 ¥36,000


Because I'm Free

2015年

四ツ切 個人蔵


シャガ

2015年

四ツ切 個人蔵


伐られても

庭の単の赤い薔薇を活けていました。
花が萎れたら葉の付け根から芽が出てきて、切り口からは根も伸びてきました。
萎れた花もとても美しく、赤い薔薇の気高さを感じました。

以前、山口でも長く入院していたのですが、そのとき同室だった二人の女性がいました。
癌や強皮症で余命数ヶ月という現実を受け入れ、穏やかに毎日を明るくきちんと過ごしておられました。
その気高さ、美しさを、この薔薇を見て思い出しました。

追記:その後、植木鉢に挿したらどんどん伸びて、2017年現在いくつも大きな花を咲かせています。原種の薔薇強い!

2014年

四ツ切 個人蔵


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